園長日記

選び取る力

 

 余市教会に来ている小学生から「シール交換」が流行っていると聞きました。そして、「ともひろ先生もシール交換をしよう!」と声をかけてもらいました。わたしは自分の部屋の引き出しをひっくり返してシールを発掘してこどもたちとシール交換をしました。

 こどもたちのシール帳を見せてもらうと、たくさんの種類のシールが大切に保管されていました。綺麗なデザインのシール、やたらと立体的なシール、中には果物に貼ってあったであろうシールもありました。お互いのシールを見せ合いながら、お互いに気に入ったシールを交換しあいます。その際にシールをどこで手に入れたのかや、自分がどうして気に入っているかなどを語り合っています。

 そんな様子を見ながら、私もこどもの頃にともだちとカードを交換しあっていたことを思い出しました。そして、自分がカードを交換していた時とは違う新鮮な気持ちになりました。というのも、私がこどものころに集めて交換していたカードはどれも「カードの強さ」や「カードのレア度」が数値化されていたものばかりでした。ですから私のほしいカード、交換してほしいカード、大切にしているカードはどれも「数値的に強いもの・貴重なもの」でした。しかし、この度のシール交換では数値で表される「強さ」とか「レア度」はないのです。交換する時には選ぶ理由は「強さやレア度」ではなく、それぞれの「好き」という気持ちによるものなのです。自分にとって「かわいい」とか「きれい」とか「納得がいく」という気持ちによってシールは選ばれます。そして、そのお互いの「きもち」を受け入れあって交換は成立するのです。

 「シール交換をしよう!」と誘われた時、私の持っているシールは果たして気に入ってもらえるのかな?と心配でしたが、こどもたちは物珍しそうに選んでくれていました。そして、それぞれ気に入った理由を述べてくれました。わたしもこどもたちのシールを見せてもらって、どこで手に入れたのかとか、最近のシールはこんな種類があるんだ!など盛り上がりました。何枚かシールを交換しましたが、その中で特に私が気に入っているのは「幸水」という果物の梨に貼ってあったであろうシールです。わたしも小さい頃バナナについていたシールをよく集めていたことを思い出してそのシールを選びました。おとなはきっと見向きもしないようなシールを大切にする「わたしはこれが好き」という気持ちは素敵なものだと感じました。

 「主体性」という言葉をよく耳にすることと思いますが、「主体性」とは「自分の幸せを自分で決める力」のことだと思います。自分が好きだと思うこと、嬉しいと思うことを自分の心で選び取る。それは人が生きていく上で欠かせない力です。そして、その「自分の幸せを自分で決める力」をじゅうぶんに発揮することで、自分だけではなく他者の幸せを願い支えることができる人になっていくことができると思います。シール交換での出来事はまさにこの自分の幸せを自分で決め、他者の思いを受け入れ喜ぶ営みであったと感じました。

 リタ幼稚園ではいろいろな場面、特に遊びの中で「自分で選び取る環境」が設定されています。おとなに言われた遊びを「させられる」のではなく、自分のやってみたい、大好きを探し、選ぶ営みがこの幼稚園には溢れています。そして、選び取ったことが周りの人たちから受け入れられ肯定されることで、一人ひとりの自信となり、他者を喜び受け入れる心の柔らかさとなると信じます。数値化された価値ではなく、「心が決めた幸せ」に豊かさを見出すことができる。リタ幼稚園の保育、遊びを通してそんな一人ひとりへと育っていってほしい。そのように願いながら、これからも歩んでまいりたいと思います。

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